結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2025年05月31日(土曜日)

5月の「忙中閑あり」とアイスランド女性大統領の「見ること」

5月最後の日。

忙しい1カ月間だった。
ゴールデンウィークの最中に、
月刊商人舎5月号を責了した。

特集は、
「現場の生産性」
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私はヨーロッパ生産性本部の定義に、
感動した。

「生産性とは、何よりも精神の状態であり、
現存するものの進歩、あるいは、
不断の改善をめざす精神状態である」

「それは、今日は昨日よりも
良くなるという確信であり、
明日は今日に優るという確信である」

「それは、現状がいかに
優れたものと思われていて、
事実、優れていようとも、
改善していこうとする意志である」

「それはまた、条件の変化に
社会経済生活を不断に適応させていくことであり、
新しい技術と、新しい方法を
応用しようとする不断の努力であり、
人間の進歩に対する信念である」

いい出来栄えの、
お役に立てる一冊となった。

ゴールデンウィークが終わると、
アメリカ・ラスベガスに行った。
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商人舎US研修会ベーシックコース。
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よく学び、よく楽しんだ。
成果が上がった。

オメガマートも見た。
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帰国すると翌週は、
2025大阪・関西万博に行った。
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大屋根リングを歩いた。
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レンゴーのブースを訪れた。
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その翌日は第10期万代知識商人大学で講義した。
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フィナンシャルマネジメント。
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翌週は東京・丸の内で、
OICグループNY研修の報告会。
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5時間近く32件の報告を聞いて、
総括し評価した。
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その足で新潟に入った。

翌朝6時にロピアムサシ新潟店に行った。
すぐに賄いをいただいた。
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8時からの全体朝礼も見学した。
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今週は月刊商人舎6月号の入稿。

この間、スクワットを続けた。
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「忙」は「心を亡くす」と言われるが、
そうとは限らない。

忙中閑あり。
忙しい中にも時間はある。
その忙中の時間ほど貴重だ。

朝日新聞「折々のことば」
5月27日の第3409回。
「見ることができないものには、
なることができない」
〈ハトラ・トーマスドッティル〉
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1975年、アイスランドの女性の9割が、
仕事や家事から離れるストライキを打った。
このストライキは「女性の休日」と呼ばれた。

そして5年後、初の女性大統領が誕生する。
それがヴィグディス・フィンボガドゥティル大統領。

爾来(じらい)、この国は、
「ジェンダー平等最先進国」と言われてきた。

トーマスドッティル現大統領は、
2人目の女性元首。

その前方にはいつも、
先達の後ろ姿があった。

編著者の鷲田誠一さん。
「先達が見ていたものを、
その背中越しに見つめてきたのだろう」

アイスランドはイギリスの北にある島国。
日本の北海道と四国を合わせたくらいの面積。
人口は約39万人。

世界経済フォーラムの男女平等調査で、
アイスランドは5年連続で1位。
2022年の世界平和度指数と安全度指数でも1位。

いい国だ。

見ることができないものには、
なることができない。

だから多少、忙しくとも、
私は何でも見に行く。

現場主義である。

見ることができないものは、
知ることができないし、
理解することができない。

そして理解できなければ、
それを評価することもできないし、
それに近づくこともできない。

だから私はできるだけ、
現場に赴くことにしている。

それによって忙しくなる。
しかしそれは心を亡くすことではない。

5月ほどではないけれど、
6月も少しだけ忙しくなる。

けれど「忙中閑あり」を忘れない。

〈結城義晴〉

2025年05月30日(金曜日)

中小小売業者の「備蓄古古古米」申請開始と紀文の「SURIMI」の力

5月30日だが、
3月下旬のような氷雨。

1日中、横浜商人舎オフィス。

毎月、月末・月初は、
雑誌づくりの仕事が待っている。
月刊商人舎6月号の入稿。

さて、
備蓄米の随意契約による売渡し。
中小の小売業者の申請受け付けが始まった。

ただし今回は2021年産の「古古古米」8万トン。

当初の30万トンは2022年産20万トンと
21年産10万トンだった。

22年産に申請が集中して、
すでに予定量に達してしまった。

今回の対象は21年産 “古古古米”

年間1000トン以上1万トン未満の、
中小小売業者には6万トン、
精米設備をもつ米販売店には2万トン。

価格は60kgあたり消費税込みで1万886円。
5kg換算で907円で売り渡す。

大手優遇の措置が改善された。
ただし古古古米。

コンビニエンスストア3社は、
この枠組みで申請する。
セブンーイレブン、ファミリーマート、
それにローソン。

コンビニは1万トンに達しなかったため、
対対象から外された。

ファミリーマートが1000トン、
セブン-イレブンとローソンは500トンを申請。

「これはあと1年経つと、
家畜の餌として出すために持っていたお米」
玉木雄一郎国民民主党代表が言った21年産だ。

そのセブン-イレブン。
日経新聞の記事だが、
「100円おにぎり・5年ぶり復活」

6月におにぎりの割引セールを実施する。
同社のリリースには公開されていない。

約40SKUのおにぎりを販売しているが、
全体の約6割を税別100円に値下げする。

ファミリーマートも、
おにぎりの割引回数券を販売する。

どちらも政府の備蓄米放出に対して、
コメを使った商品の割高感を払拭する意図らしい。

セブンは6月11〜14日の4日間限定。
「おにぎり・寿司スーパーセール」

税別170円以下のおにぎりを、
税別100円に値下げする。

171円以上200円以下を150円、
201円以上の商品は200円にする。

セブン-イレブンのコメント。
「これまでに調達したコメを前倒しで使う。
備蓄米は活用しない」

ファミリーマートは、
決済アプリ「ファミペイ」を刷新し、
決済頻度の多い顧客に割引回数券を販売する。
回数券は10枚つづりで500円。
おにぎりは1枚当たり100円安く買える。

さてこの「備蓄米便乗商法」
顧客に受け入れられるか。

セブン-イレブンの加盟店オーナーたちには、
値下げや安売りはひどく評判が悪い。
粗利益率だけでなく粗利益額が下がるからだ。

今日は午後4時に、
紀文食品のお二人が来社。

堀内慎也マーケティング部長(中)と、
高柳謙一郎営業企画部部長(右)。
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紀文正月フォーラムは、
今年も8月27日(水)・28日(木)に開催される。
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毎年ご参加の皆さん、
時間を空けておいてください。

その打ち合わせ。

詳細は紀文食品から発表される。
しかし堀内さんも高柳さんも、
一つ抜け出した観がある。

いい提案ができそうだ。
私も時代を見つめて、
明快な提言をしたい。

高柳さんと堀内さんは、
新しいポジショニングを構築しつつある。
それが年末年始商戦に発揮される。
大いに期待したい。

すでに新製品にはそれが表現されている。
「すりみのちから」
紀文すり身

SURIMI BARのアイテム群。
紀文②

私は関西に出張するといつも、
新大阪の駅でビールとつまみを購入する。

そのつまみの定番が、
チェダーチーズ入りカニ風味バーだ。

堀内さんも高柳さんも、
紀文正月フォーラムに向けて、
提案内容を練り上げていく。

楽しみにしてください。

朝日新聞「折々のことば」
第3411回。
「みんなが知っているものを、
知っている別のなにかに
変換するからこそ、
共感してもらえます」
〈田中達也〉

「眼鏡を自転車に、ブロッコリーを大樹に、
ドーナツをCT検査機に」

田中達也さんは、
日用品や食品を別の何かに見立て、
ミニチュア写真を撮るクリエーター。

「見立てとは、今あるものを組み合わせて
新しい価値を生みだす術(わざ)だ」

「異文化を前にしても、
生存の同じ課題にこうした眼を向けると、
世界は同じだと気づく」
『みたてのくみたて』(ダイヤモンド社)から。
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練り製品を「SURIMI」に。
それは「みたてのくみたて」だ。

今日は遅くまで原稿を書いて、
夜食はいきなりステーキ。IMG_3674 (002)

最後に彫刻家・平櫛田中(ひらぐしでんちゅう)
「今日もお仕事、
おまんまうまいよ」

〈結城義晴〉

2025年05月29日(木曜日)

吉田直樹PPIH社長の小泉進次郎農相宛て「コメ流通意見書」

梅雨は間近だ。
私にはわかる。

紫陽花。
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酸性の土壌に咲く紫陽花は、
青い花をつける。
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マーガレットストロベリーホイップ。
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濃いピンクからピンクへ、
そして白色へと変化する。IMG_3669 (002)

昔、若いころにつくった歌。

マーガレット
マーガレット
くるくるマーガレット
あの子の髪に
マーガレット咲いた♬

マーガレット
マーガレット
ゆらゆらマーガレット
あの子の髪の
マーガレットゆれる♬

旋律が美しい歌となった。

明日は雨だ。

さて3日続けて農水省の備蓄米放出問題。

商人舎流通SuperNews。
農水省news|
「随意契約による政府備蓄⽶売渡し」5/28申込確定

5月27日時点の33社が、
28日時点では61社に増えた。

27日の総申し込み量15万7073トンが、
28日には21万9691トンに増えた。

スーパーマーケットでは、
ライフコーポレーション、
ヨークベニマル、
バローホールディングス
アークスなどが新たに申請した。

総合スーパーのイズミ、平和堂、サンエー。
ドラッグストアのコスモス薬品。
さらにコストコホールセールジャパンも、
⽇本⽣活協同組合連合会も申し込んだ。

申し入れ数量の多い順に記すと以下になる。スクリーンショット 2025-05-29 230350

コスモス薬品が2万トンで、
イオン商品調達㈱と並んでトップとなった。

日経新聞の記事では、
コンビニ3社は申請が受理されなかった。

「コメ全体の取扱量年間1万トン以上」の、
受け渡し条件を満たさなかったため」らしい。

ファミリーマートとローソンは、
30日以降に再び申し込む。

これも日経新聞の記事。
PPIHの吉田直樹社長が、
小泉進次郎農相宛てに、
意見書を提出した。

日経はその全文を入手して掲載した。
なかなかの正論だ。
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「流通が自由化されたが、米は、
生鮮食品でありながら、
加工して製品化した状態でしか買えない」

「まず、米の集荷役であるJAから
一次問屋に米が卸される」

「流通の自由化というものの、
集荷役のJAと取引している一次問屋は、
実質的に特約店のように決定しているため、
新規参入が難しい」

「一方、二次問屋、三次問屋については、
参入障壁が著しく低い」

「実際、ブローカーなど、
利益目的だけの業者が横行し、
当然、利益のみの目的のため、
今回のような
需給のバランスが崩れたときには、
流通に協力するのではなく、
利益を優先させるため、
供給を抑える原因の一つになっていると
考えられる」

「また『銘柄米』と銘打っている米の中には、
等級の異なる米が混ぜて売られていることも多い」

「最終顧客である消費者には、
その中身がわからず、銘柄の情報のみで
購入の決定を行わざるをえない」

「このため、同じ銘柄米であっても、
値段が極端に異なることがあり、
一層不透明な米流通になっている」

そして課題➀②③があげられ、
解決策提案がそれぞれ➀②③で記されている。

[課題①]は、
「参入障壁が高い一次問屋の構造」

【解決策提案①】
多重構造を解消し、集荷役であるJAなどと
卸売価格の取引が直接できるようにすること。
また小売りから、店頭までの流通を担う
二次問屋、及び三次問屋へ
依頼をかけるような取引形態にすること。

[課題②]は、
「参入障壁が低い二次問屋以降と
生産者直接取引」

【解決策提案②】
米の保管設備や実際の取引先物量や
販売物量の証明、開示など、
届け出制や許認可制の導入により、
公平性を担保しつつ、
利益目的のプレイヤーの参入を防ぐ。
または、仕入れ取引のなかで、
販売後に還付されるような仕組みを導入する。

[課題③]は、
「銘柄米の銘柄名における
ルールの消費者認知の低さ」

【解決策提案③】
青果などは、「優・秀」などの
明確な品質基準があり、これの基準が
消費者にも広く認知されているため、
相場と大きく乖離した販売価格に
なりづらい構造になっている。
米についても、等米表記を行うなど、
消費者に広く認知される
品質の基準設定を行うことで、
品質と連関性がある売価設定が担保でき、
過度な売価上昇を抑制することが
可能と思料する。

➀の多段階性は、
早急に解消する必要がある。
学問的にも証明された遅れだ。

②も多段階性の問題だ。

しかし今回の備蓄米のJA外しは、
図らずもこれらの問題を解決してしまった。

③の品質基準の明確化は、
産業として健全な成長には必須。

アメリカ農務省の牛肉の格付けは、
牛肉産業の発展を支えた。

今回の備蓄米問題が、
日本のコメ産業の発展につながれば、
これに越したことはない。

吉田直樹さん、
この意見書はよかった。
ありがとう。

〈結城義晴〉

2025年05月28日(水曜日)

備蓄米問題に対する宮﨑文隆君の「正論」に賛同する。

朝から東京駅。
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その北口天井のレリーフ。
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私は大手町プレイス内科。
毎月の血液検査、尿検査。
今回はレントゲンと心電図の検査もやった。

主治医は田嶼尚子先生。

その田嶼先生が、
東京慈恵会医科大学教授のころの、
新聞のインタビュー記事。
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今回の検査結果は良好だった。
ヘモグロビンA1cは改善された。
中性脂肪も尿酸値も基準内。

レントゲン撮影の画像を見せてもらった。
田嶼先生は「若者のようよ!」と褒めてくださった。
ありがとうございました。

さて、自宅のそばにある、
まいばすけっと。
イオンの小型スーパーマーケット。 IMG_3663 (002)
今年2月末時点で1204店舗。
昨年2月決算で2904億円。

レジ前のコメの売場。
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こちらは商人舎オフィス近くのまいばすけっと。
コメ売場は完全に売り切れ状態。
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下段の5kgのあきたこまちは本体4099円。
中段の2kgのあきたこまちは1999円、
コシヒカリは2099円。

「お客さまへ」のPOPでは、
「お一人様1点のみ」の告知。
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の状態からは早急に脱しなければならない。

商人舎流通SuperNews。
農水省news|
5/27/14時時点の「備蓄⽶売渡し」の申し込み状況

イオン商品調達㈱をはじめ、
イトーヨーカ堂、ヤオコー、
万代、OICグループなど、
主だったチェーンが出揃った。

5月27日午後2時時点。
その後は公開されていないから最新の情報。

申し入れ数量順に並べると以下となる。スクリーンショット 2025-05-29 062703

イオン調達が2万トン、
PPIHが1万5000トン。
サンドラッグが三番手で1万2866トン。

オーケーが1万500トン。
1万トンがOICグループ、
アイリスアグリイノベーション、
楽天グループ。

次にヤオコー9944トン。
なぜ1万トンで申請しなかったのか。
きちんと数字の裏をとって、
この申し込みになったのだろうが、
ヤオコーらしい。

それから万代の8000トン。
万代はもっと売ると思うが、
「松竹梅」の考え方が基本にあるのだろう。

イトーヨーカ堂とシジシージャパンが5000トン。
控えめな印象だ。

いずれも2022年米の申し込みが多い。

宮﨑文隆君が、
facebookに書いている。

まさしく正論で大いに賛同したい。

「備蓄米という公共財の適正な供給方法として、
販売実績(年間1万トン以上)に基づいた、
事実上大手小売業限定の随意契約について、
なんとなく違和感が生じた」

この違和感は確かに、大いにある。

「まずは制度劣化による失策を棚上げして、
さもスピード感をもってやっています、
という姿勢がそもそも、
気に食わないというのもある(笑)」

「(笑)」は書かないほうがいい。

「これは選挙対策と小泉贔屓の、
メディアクロスだから仕方がないか」

その通り。

「だがリアルオプションとして、
拙速でも実行する、という点は評価したい」

これにも同感。

「国民の生活を守るという大義名分で
大手小売業が随意契約に参加するのも、
筋は通る」

そのとおり。

「だが緊急性とスピード実現性を盾に、
①大手に絞って客数に直結する、
コモディティである米を安価に提供
②随意契約を結んだ企業が値下げする
③中小は追従を迫られ体力を失う
④結果的に寡占化が進行、
ということにつながらないだろうか」

そのとおり。
現象として寡占化が進むことは確かだ。

この理屈は日本の農業全体に向けても、
今後、当てはめられるだろう。

「本来は、立法府が、
今回のような状況を想定した公共財の
適正な供給方法についての
ガイドラインを提示すべき」

そのとおり。

「行政や公取が、
公共財の選別供給が市場におよぼす影響を調査し、
事前シミュレーションすべき」
これも正しい。

「中小企業庁は、販売実績がなくても
『共同申請枠』を確保するなどの
中小にも目を向けた施策を検討、入れ込むべき」

これもそのとおりだ。

「『大手で当初の上限達してしまいました』では、
まさにお粗末極まりない」

言い切ったが、そのとおり。

「緊急性を盾に、
ただでさえ退廃、劣化が深刻な
政治行政の裁量に無批判に任せれば、
商業の多様性、倫理、適正な競争も
奪われていくのではないか、と考えてしまう」

宮﨑君は商業界時代に私が採用し、
販売革新編集長に任命した人財だ。

正論を丁寧に、論理的に述べてくれて、
実にうれしい、頼もしい。

私が書かなければいけなかった、
と反省したほどだ。

「本来、公的資源の配分には、
『透明性、公正性、説明責任』が問われるが、
『緊急対策』『物価抑制』という大義名分のもと
基準なく裁量の発動、選別的恩恵付与は、
行政倫理の根幹をも揺るがすものではないか」

「かつて渥美俊一先生は、
GHQが主導した商業民主化政策の中で、
『これからの流通は
国家の制度設計に頼ることなく、
民が自ら設計し、管理し、
育てていくべきもの』と喝破し、
『自主独立形体のチェーンストア企業』づくりを
単に小売業の効率化、規模化を
目指したものではなく、
他に任せず志ある商人たち共働し、
国民生活を支える経済インフラを築く
運動体に仕立てたことを憶い起こす」

これにも同感だ。

渥美俊一の「経済民主主義」である。
その志は私たちが継がねばならない。

倉本長治主幹も渥美先生も、
政治と宗教には口を出さない、
と言い続けたが、
今のような状況が生まれたら、
政治の考え方を正しただろう。

ただし、イオン調達をはじめ、
多くのチェーンが申し込みをしたことに対して、
リアリストの倉本も渥美も、
「誰よりも早く、どんどんやれ!」と、
奨励したに違いない。

渥美は寡占を否定はしなかった。
むしろ推進した側だ。

倉本も渥美も、
政治に媚びるな、
インディペンデントであれ、
と諭した。

それでも商売は、
「利は元にあり」と言った。

備蓄米に関しては、
倉本長治と渥美俊一に、
学ぶことができる。

それは私たちの矜持であり、
強みである。

〈結城義晴〉

2025年05月27日(火曜日)

備蓄米に関する「客のため」と「顧客の立場」

政府による備蓄米売渡し随意契約申込企業。

農林水産省から発表された。

商人舎流通SuperNews。

農水省news|
5/27付 随意契約による「備蓄⽶売渡し」の申し込み状況
bitikumaimousikomi

㈱諸長は6000トンを申し入れた。
新潟県魚沼市の米穀集荷・販売企業。
コシヒカリなど産地精米する。
年商259億円。

備蓄米の販売もする。

イオンとイトーヨーカ堂がリストに入っていないが、
午前9時段階の集計だからこの後、申し込む。

イオンは約2万トンの申し込みで、
グループ各社で販売する。
2000円の価格。

イトーヨーカ堂は5000トンを調達する。
イトーヨーカドーとヨークフーズなど197店で販売。
価格は5kgで税別2000円。

このほか、ロピアを経営する㈱OICグループ。

ファミリーマートも申し込みして、
コンビニ業態にふさわしく1kg400円の売価。

エイチ・ツー・オーリテイリングは1200トン。
関西フードマーケット各社で販売。

「ここは参加しなければ」
そんな空気が流れている。

店頭に「備蓄米入荷」など掲げれば、
それなりに集客につながる。

備蓄米はコモディティグッズだ。
ノンコモディティのコメと比較して、
アソートメントするのだろう。

ただし備蓄米の放出は、
JA抜きを断行して、
コメの流通革新を意図している。

全国に行きわたらせることよりも、
高騰するコメの店頭売価を下げる目的をもつ。

それを了解したうえでの対策となる。

5月22日の日経新聞「大機小機」
タイトルは、
松下翁「客が好むものを売るな」

故松下幸之助さんの言葉。
「無理に売るな。
客の好むものも売るな。
客のためになるものを売れ」

松下電器、パナソニックグループの創業者。

このコラムは、
シニア向け「プラチナNISA」の話だ。
少額投資非課税制度。

それも大事だが私は幸之助の言葉が気になる。
「売る前のお世辞より、売った後の奉仕、
これこそ永久の客をつくる」

セブン-イレブン創業の鈴木敏文さんは、
口癖のように繰り返した。
「顧客のために考えるではなく
顧客の立場で考えよ」

松下幸之助は製造業、
鈴木敏文は小売業。

備蓄米販売を顧客の立場で考えると、
さてどうなるか。

よく考えてみる必要がある。

そのセブン-イレブンを中核とするのが、
㈱セブン&アイ・ホールディングス。

株主総会で新体制が承認された。
無風総会だった。

井阪隆一前社長は退任のあいさつで、
涙ぐんでいたとか。

私は言い続けている。
伊藤雅俊から離れると、
この会社はおかしくなる。

同じように鈴木敏文の考え方を貫徹せよ。
それがとくにセブン-イレブンにとって、
最高のサバイバル戦略となる。

ただし伊藤雅俊と鈴木敏文には、
違いがある。

この違いにかかわる問題が発生した時、
現在の社長や幹部や社員が、
考えて考えて考え抜かねばならない。

「顧客のため」と言ったのは伊藤雅俊で、
それは松下幸之助と同意である。

それに対して鈴木は「顧客の立場」を強調した。

そのことを考えるべきなのだと思う。

禅問答のようになってしまって恐縮。
しかしそれがセブン&アイなのだ。

一方のイオン㈱の株主総会は、
明日の5月28日から。

こちらも順当に会社案が了承されるのだろう。
岡田卓也さんは100歳の百寿。

それだけで目出度い。

さて、今週は月曜から横浜商人舎オフィス。

月刊商人舎6月号の入稿が始まっている。

オフィス裏の遊歩道。
木々の緑が深くなってきた。
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ランチはラーメン「楓」
週一でここに来る。
中国人の女性店員さんと親しくなるほど。IMG_3645 (002)

モヤシとバターコーンの味噌ラーメン。
こんなにカロリーのあるものを食べてはいけないのだが。IMG_3644 (002)

夜は会社の帰り道のパスタショップ。IMG_6182 (002)

こちらもカロリー過多。IMG_3648 (002)

今日は狭いオフィスでスクワット。IMG_6188 (002)

ちょっと疲労気味なので、
40回で切り上げた。
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そして夕方、シェラトン横浜。
古い友人と待ち合わせ。
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エミリオ・グレコの「水浴の女」
1913年~1995年。
イタリア・シチリア生まれの彫刻家。
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30代後半のころの話をして、
盛り上がった。

それから50代中ごろの話も。

人間には人生の分岐点で、
「押す力と引く力」が働く。

私は商業界社長を押す力で辞めた。
そして引く力で立教大学大学院の特任教授になった。
コーネル大学RMPジャパンの副学長もやった。

もちろん商人舎をつくった。

引く力は、自分で想像していた以上に、
強い磁力をもっていた。

セブン&アイの鈴木さんにもあったし、
今度辞めた井阪さんにも、
「引く力」があるのだろう。

そんなことを少し考えた。

〈結城義晴〉

2025年05月26日(月曜日)

農水省の「備蓄米」随意契約売渡しと「市民生活の砦たれ」

Everybody, Good Monday!
[2025vol㉑]

2025年第22週。
ああ、5月最終週。

来週の日曜日から6月。

さて、
小泉進次郎農林水産相。
動き回っている。
スクリーンショット 2025-05-27 043808

北海道札幌市に出向いて、
コメ関係者8人と面会した。

生産者は北海道東神楽町の久保宣夫さんら3人、
小売業からは横山清㈱アークス会長、
大見英明コープさっぽろ理事長、
富山浩樹サツドラホールディングス㈱社長。

「コメの異常な価格高騰がこれ以上続けば、
コメ離れを加速させかねない」
危機感を述べた。

そして今日、「備蓄米」売渡しについて、
概要を発表した。

商人舎流通SuperNews。

農水省news|
備蓄米の随意契約の概要公表/取扱い年間1万tの小売業対象

農林水産省が備蓄米を随意契約で売り渡す。
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売り渡し数量は30万トン。
内訳は令和4年産米20万トン、
令和3年産米10万トン。

売渡し価格は玄米60㎏当たり、
加重平均で1万700円(税抜き)となる。
令和4年産が1万1010円、
令和3年産が1万0080円。

これまでは入札方式だったが、
前回入札の平均落札価格は2万302円だった。
今回は前回より47%安くなる。

対象は「大手小売業者」に限定する。
そのためのデモンストレーションが、
小泉農水相の面会だった。

農水省には「米対策集中対応チーム」が発足した。

希望する事業者から申請の受け付けをする。
買い戻しの条件は付けないし、
輸送費は国が負担して、
倉庫から買い手の小売業者が希望する、
センターなどまで国が届ける。

手厚いフォローだ。

ただし精米費用は小売業者が負担する。
まあ、当然だろう。

目安は5kgでみれば原価は、
1万700円÷60kg×5㎏=892円。
10kgならば1783円。

これに精米や輸送費などの、
コストをオンして、
さらに小売業の値入れが入って、
店頭販売される。

農水省の判断では、
これで小売価格が5kg2000円程度となる。

特定の小売価格の要請はしない。
独占禁止法上の問題。

ここで「大手小売業者」とは、
コメの取扱量年間1万トン以上の小売企業。
楽天などのネット通販事業者も含まれる。

1万トンは1000kgだから、
10kgで販売すれば100万袋、
5㎏ならば200万袋。

100店舗のチェーンストアならば、
10kgで1年間1店あたり1万袋の販売力が必要。
52週で割ると1週あたり192袋、
1日あたり27.4袋となる。

50店ならばその2倍の販売力が必要だ。
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しかしかなり多くの企業が、
30万トンを奪い合うことになる。

農水省はPOSデータの情報提供も求める。
契約後に社名を公表する。

8月には25年産のコメが出回る。
その前まで提供し販売する数量を、
それぞれに申し込んでもらう。
毎日先着順で受け付けて契約を結ぶ。

この「毎日先着順」がわかりにくい。

そして申込みが競合する場合は、
国が調整して分配する。

どう調整するのか。

取り扱い申請時に提出するのは、
⑴申し込み書
⑵誓約書
⑶名称などの公表同意書
⑷販売計画書など

申し込みが30万トンを上回った段階で、
放出量を上積みする方針。

農水省は今日、説明会を開催した。
そして318社が参加した。

総合スーパーやスーパーマーケット、
ホームセンターも、
主だったチェーンストアが参加した。
楽天やLINEヤフーなどオンライン業者も。

当然ながら年間1万トン未満の企業も、
参加の希望を出したようだ。

農水省は要件の緩和を検討する。

従来の備蓄米の売渡し対象は、
JA全農など大手集荷業者だった。

そこから卸売業、小売業と、
段階を追って流通させた。
これでは時間がかかった。
滞留も起こったし、価格も値上がりした。

小売業に直接提供して、
早期に店頭に並べる。
そして売価を抑える。

中抜きの流通だ。

それによって価格が下がることを、
証明してしまったことになる。

こんなところに「流通革命論」が出てきて、
2021年6月7日に亡くなった林周二先生は、
草葉の陰でほくそ笑んでいることだろう。

ただし緊急事態のお上主導の流通である。

従来の大手集荷業者も、
精米をはじめさまざまな機能を果たすのだろう。
ここは下手な戦術を使わず、
協力して国民への貢献に邁進してもらいたい。

では、みなさん、今週も、
市民生活を守る砦たれ。

Good Monday!

〈結城義晴〉

2025年05月25日(日曜日)

ラッセルの「真摯さ」と日本惣菜協会総会の「哲学」

ポール・クルーグマンが、
「完全に狂っている」と言った。
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トランプ関税のことだ。

日経新聞「春秋」
哲学者の鶴見俊輔は、
ハーバード大学に留学した。
1939年、16歳だった。

成績優秀で、すぐに飛び級コースに進んだ。

ところが2年後に太平洋戦争が始まる。
開戦からまもなく鶴見はFBIに捕まって、
留置場送りとなった。

大学の対応に驚かされる。

FBIに書きかけの論文が押収された。
それを担当教授が取り返し、
続きの執筆に取り組めるようにしてくれた。
留置場に試験官も派遣した。
拘束されてしまったために、
鶴見は十分に講義に出ていない。
だが彼が獄中で仕上げた論文を、
それを補うものと認めて正式に卒業証書を出した。

戦争中の「敵性外国人」にして、
この処遇。

鶴見は言っている。
「政府とハーバードの判断は違う」
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コラムニスト。
「それは自由の国のソフトパワーの源泉だった」

私もそう思う。
コーネル大学の対応によって、
日本にもコーネル・ジャパンができた。

「強権国家のごとき施策を、
またも打ち出したトランプ政権」

同大の留学生受け入れ資格をストップする。

日本の菅義偉政権の学術会議問題に、
似ていなくもないが次元が違う。

鶴見は在学中、哲学者の講座を聴講した。
バートランド・ラッセル

そして感銘を受けた。
「自分がしゃべっていることは全部、
間違っていると思うことがある」

ラッセルは限りなく真摯だ。
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コラム。
「好き放題の王様の耳にも、
いつか届くといいのだが」

届くはずはないし、
コラムのこの終わり方はつまらない。

もう言葉そのものは忘れてしまったが、
中学2年の英語の教師が、
よく、ラッセルの文章を教えてくれた。

「死の恐怖を征服するもっともよい方法は、
(少なくとも私にはそう思われるのだが)
諸君の関心を次第に
広汎かつ非個人的にしていって、
ついには自我の壁が少しずつ縮小して、
諸君の生命が次第に
宇宙の生命に没入するようにすることである」

かの78歳は自我の壁をまだ膨張させている。
哲学そのものを否定している。
いやその存在すら知らないようだ。

ラッセルは言う。
「個人的人間存在は、
河のようなものであろう。
最初は小さく、狭い土手の間を流れ、
激しい勢いで丸石をよぎり、滝を越えて進む」

「次第に河幅は広がり、土手は後退して
水はしだいに静かに流れるようになり、
ついにはいつのまにか海の中に没入して、
苦痛もなくその個人的存在を失う」

「老年になって
このように人生を見られる人は、
彼の気にかけ、育む事物が
存在し続けるのだから、
死の恐怖に苦しまないだろう」

「私は、他の人が、
私のもはやできないことをやりつつあるのを知り、
可能な限りのことはやったという考えに満足して、
仕事をしながら死にたいものである」

バートランド・ラッセルは、
1872年に生まれ、1970年に没した。
イギリスの哲学者、数学者、論理学者。

さて、
一般社団法人日本惣菜協会、

2025年度定時総会。
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会場は東京會舘。

日本の惣菜の市場規模は、
2024年度に11兆2882億円。
前年比2.8%増。

伸び続ける中食産業。
産業の中心となるのが日本惣菜協会だ。
2025年5月時点で、
正会員、賛助会員、協力会員、
合わせて718社となった。

山本恭広編集長がセミナーから参加して、
報告してくれた。
会場は7階の「SAKURA」。sozai-seminar1

講師は味の素㈱の岡本達也さん。
執行役常務食品事業本部副事業本部長。sozai-seminar2

テーマは「心を動かす商品開発・マーケティング」。
岡本さんは1987年に味の素に入社。
「CookDo」「ピュアセレクトマヨネーズ」など、
基幹商品の開発・販売戦略に携わってきた。

2023年4月に、
「マーケティングデザインセンター」を設立し、
現在もセンター長を兼任する。
今まで厳密に検証されなかった広告効果について、
「マインドシェア」の指標を数値目標に取り入れた。

面白い。

セミナー終了後、
3階のローズに移動して懇親会。sozai-party

開会あいさつは協会会長の平井浩一郎さん。
㈱ヒライの社長。
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熊本県中心に福岡・大分・佐賀の4県で、
弁当・惣菜店約200店舗をチェーン展開する。

日本は人口が減少し続けているが、
中食産業はますます存在感を高めている。
その惣菜産業の役割の重要性を強調した。

一方で3つの課題を挙げた。
人出不足、原価高騰、米不足。

伸びる産業ほど課題も大きい。

祝辞のあとは新入会員企業の紹介。
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2025年1月以降に入会した20社が登壇。
正会員、賛助会員、1社ずつ紹介された。

業界代表あいさつは、
㈱日本アクセス社長の服部真也さん。

食品流通産業を広くカバーする立場から、
「朝食」市場の潜在力を指摘した。

引き続き乾杯の挨拶も服部さん。
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中締めは、
日本惣菜協会副会長の林香与子さん。
㈱マルハ物産会長。
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徳島県に拠点を置き、
レンコンの生産・加工・販売で、
日本トップクラスの規模をもつ。

元気な中締めだった。

成長する生活領域の協会だからこそ、
真摯さと哲学をもった集まりでありたいものだ。

〈結城義晴〉

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